青天の霹靂

つやのよるから見る、不倫リスクを考える

青天の霹靂

突発的な嵐のように

春二の行動も相当に物議を醸すものといえる、自分の妻が行ってきた不貞を暴くように意識を手放すようになるまでの間、当然のように関係を持ってきた男性たちに過去を見つめなおせと言わんばかりに動いていく。それにより男性が一番ダメージを負うのではなく、今まで懸命なほど夫や恋人を信じ続けていた女性たちの人生に波風を立ててしまうのだった。平穏無事に暮らしていたはずなのに、艶というかつて存在していた一人の女性によってもたらされる波紋は大きくなっていき、やがてあらゆる意味で崩壊をもたらしていく。

作品の中で春二の行動により男たちの、自分が知らない他人のような顔を垣間見たことによって6人の女性がそれぞれの愛とはなにかを確かめるために奔走するのだった。自分の信じたものは何か、自分が欲しかったのはこういうものだったのか、どうしてこんなことになってしまったのか、各々の感情が交錯する中で物語は加速していきます。

生々しい群像劇

春二の行動によって動き出す女性たち、きちんと家庭を築いているものもいれば、分かっているのに不貞行為をやめられない者もいる。それぞれの状況を簡単に考察してみよう。

ケース1 石田 環希の場合

まず1人目に、艶の従兄でもある小説家の夫と暮らしていた『石田環希』についてだ。彼女の場合、そもそも従妹がいることも露知らなかったが、春二の電話によってその存在を初めて知ることになる。死にそうになっていると言っても煮え切らない、見舞いに行く様子もない夫の姿に違和感を覚える。するとある筋から彼が著している小説の世界観に艶とそっくりな登場人物がいることを耳にすると、一転して夫と艶が何かただならぬ関係にあるのではないかと疑問を持ち始める。

けれどその疑問が信じていたはずの夫の影に、艶以外の女性がいることを知ってしまうことも同時に意味していた。

ケース2 橋本 湊の場合

次に、艶が最初に婚姻状態となった男性と愛人関係をしている、不動産会社に勤める『橋本 湊』だ。すでに艶との関係は途切れている元夫との愛人という関係をしている時、かつて彼と結婚していた艶という女性の存在は湊自身にある1つの行動を起こさせる。それはかつての妻と自分と、どちらを真に彼が愛しているかだった。けれど湊自身が不貞を行い、妻から男を寝とっている状態にある。その結果として、彼女は自分の信じたものが何だったのかを思い知らされてしまう。

ケース3 橋川 サキの場合

3人目には壮年の女性である『橋川 サキ』だ。彼女は1年ほど前に夫が謎の自殺を果たしてしまい、パートをしながらの暮らしの中でどうして死んでしまったのか、その理由を必死に探し続けていた。そんな時、家のパソコンに届いた春二からのメールには夫が不倫をしていたかもしれないという事実を告げる内容が記されていた。死の真相を確かめることが出来るかもしれないとして、サキは艶と春二のいる大島へ行くことを決意するが、そこで知る真実は彼女が認めたくはない事実であった。

ケース4 池田 百々子の場合

4人目の女性である『池田百々子』、彼女は大島に暮らす美容師だった。彼女が付き合っている男性は艶がまだ意識の合った頃、ストーカーしてまで物にしようとしていた男性と恋仲にあった。大島とも面識のあった百々子は、ようやく艶の影がいなくなった事に安堵するも、昏睡し続ける艶を献身的過ぎる愛する春二の姿に百々子の心が揺れ動く。それはいつまで経っても愛しているはずの男性から決断を聞けない焦燥を意味しており、本当に自分の愛が艶以上に彼を愛しているのかと自問自答するきっかけとなっていく。

ケース5 山田 麻千子の場合

そして5人目は春二の前妻との間に生まれた『山田 麻千子』が出てくる。8歳の頃、まだ幼い自分と母を残して父が別の女性と駆け落ちした事実に、彼女の心には少なからず影を落としていた。心の何処かで求めていた父の姿に、彼女はいけないと分かっていながらも女性を食い物にしている大学の教授と肉体関係を持っていた。そんな時、父が共に連れ立った女性である艶が危篤という噂を聞きつけた麻千子は母とともに大島へ行こうと促すのだった。

ケース6 山田 早千子の場合

最後の6人目は春二の前妻である『山田 早千子』が登場する。愛していたはずの夫が自分と子供を捨てて女性と駆け落ちし、すでに離婚も成立してから時間も経過していた。しかしそれでも心の何処かで春二に対する想いを捨てきれずにいた早千子は、娘の麻千子から艶の危篤を知らされ、共に大島へ行こうと提案される。迷いながらも大島行きを決断した早千子だったが、彼女が決断したのは意外な結末を招き寄せる。

人生を左右する結末に

6人もの女性が1人の女性が登場したことによって人生そのものが翻弄されてしまう。春二の元妻に至っては過去を引きずりながら生きてきて、それでも彼に対する想いを捨てきれずにいた。ラストに待ち構えている結末には、考えさせられる展開になるはず。自分の愛が本物で相手から与えられるものがそうでないかどうかを。