色々突き刺さります

つやのよるから見る、不倫リスクを考える

色々突き刺さります

不倫という行為を呈する

当作品を初めてみた時、度肝こそ抜かされないものの最初から最後までなんだか肉々しいくらいにリアルな情景が映しだされているような気分に苛まれたものだ。この際、登場人物の殆どが不倫をしているという世界観についてツッコミを入れる云々という展開はこの際捨て置くとしても、人によってはこれまでの人生そのものを揺るがしかねないような事態に呆然とスクリーンから目が離せなかった。自分たちが持っている愛情が本物かどうか、愛する人が自分以外と接している時に見せている表情こそ本物なのか、様々な人間模様が展開されているのが見どころとなっている。

では実際に自分がこうした恋愛を経験したいかどうかと問いかけられた時、Yesと答える人がどれほどいるかを考えてみよう。見方の問題より、発端が不貞行為の結末によって生じた駆け落ちから物語は始まっている。その時点で純愛をこよなく愛している視聴者にしてみれば受け入れがたいものと断罪したくなる世界観となっている。ですがそこから見えてくるのは、業よりも深く、憎しみよりも猛々しい、狂おしいほどの愛が感じられるのも間違いない。度々語られる、憎しみから生まれる愛の形もあるというのも頷けるのかもしれない。

大人の恋愛は深い、例えどんなに愛し愛し尽くしても愛する人が働く裏切りにあったとしても、確かに芽生えているその感情を切り捨てることが出来ずにいるのが春二だ。そしてその春二の行動によってそれまでの生活に変化をもたらされる女性たちの想い、熟年した男女の恋愛はどこにいっても形は様々だ。

男と女の関係は辛いよ

男女が結ばれ、それこそ始まりは熱愛から始まる純愛を繰り広げていたとしても、時間を経ることでいつしかかつて誓い合ったはずの愛が脆く崩れ去ってしまうことなどよくある話だ。ここ10年近くの間で話題にも上がっている熟年離婚、連れ添ってから何十年という時間の中で喜びも怒りも悲嘆も、何もかもを経験してきたが一緒の墓に入ることを受け付けられないと思った時、夫婦の関係は花が散るように呆気ないものです。

家族にしてみればここまで来てどうして離婚をしなければならないのか、それしか手段はないのか、などとあの手この手で何とか判断を考えさせようと必死になる。ですが年を取れば必然と頑なな意思を持つようになり、いくら説得されようが決断は揺るがないといった人も出てくるものです。感情任せというわけではない、積もり積もった鬱憤が臨界点を超え、これから先も同じような状況が続くかという思いに耐え切れない人が辿る結末ほど悲しいものはない。

ですがそうした酸いも甘いも経験して、何もかもを寛容に許せとまで行かずとも何だかんだで元鞘に収まってくれるケースも時にはある。そもそも熟年離婚の決め手となるのが普段の何気ない生活から生じる不満から来ているケースが大きい。そうしたストレスを定期的に解消してあげることで関係は円滑なものとなり、事を荒立てることなく順風満帆と行かずとも波風立たない内に終局する。

しかしだ、そうした不満の中に『不貞』というワードが絡んでくると話は別だ。何せ一度許しがたい裏切りを行っている事実に変わりなく、それからの生活で二度とそうした行いをしていた場合には、三行半を突きつけられても自業自得でしかない。夫であれ妻であれ、不貞行為をするというのはそれだけ重いことなのだ。

春二の愛は本物か

そうして考えてみると劇中の春二が艶に寄せる愛情とは何なのか、それが気になってくる。何度となく裏切りを繰り返し、それでも自分のもとに帰ってきてくれこそすれど反省する様子もない。そしてそれを悔い改めることもないまま病床に伏せる形で語る言葉すら放棄されて、彼女の最期を看取らなければならない男の気持ちはどこへもその鬱屈を晴らせない。作中、狂気じみた様子で刃物を艶に突き立てようとするシーンもあることを考えると、妻が行ってきた行為を全て許して受け入れていなかったことだけははっきりと読み取れるはずだ。

だがそれでも春二は艶を捨てようとせず、むしろ彼女がこれまで関係を築いてきた男性たちがどれほど艶を愛していたのか、その深さを試そうとまでする。その真意が何処にあって、どうしてそこまでする必要があったのか、分かろうと思っても分からない部分と言えるでしょう。

愛を超えた先にあるのは

憎しみと愛は表裏一体の感情と個人的には考えている、『愛憎』という言葉がある位に愛は深まれば深まるほど憎しみという質を帯び始めていく。それが明確に負の感情となっていく瞬間こそ不貞、しいては不倫や浮気といった不貞行為によって助長される。

春二は確かに艶を愛していたのは間違いない、けれど彼女に対しての感情が愛と呼べるのか、それとも憎しみと呼ぶものだったのか、それを判断するのは見ている方々に委ねられる点でしょう。